タイプではありませんが

 星野は気にした様子もなく、手に持っていたビニール袋を渡す。
「はい、土産」
 玄関先で星野が差し出したのは。
「たこ焼きと焼きそば。どうせ食ってないだろ、まともに」
「ゔっ……」
 当たり前だがバレてる。
 今まで散々仕事やプライベートなことを語り合ってきたのだ。
 楓のことなどお見通しなのだ。

「山下」
「……何?」
「それ、二人分あるんだ。俺も食べていっていい?」
 強引に玄関を開けさせた人と同じとは思えないくらい穏やかな発言。
「イヤならこのまま帰るから」
 この星野の言い方は知っている。どんな表情をしているかも。
 恐る恐る目線を合わせる。案の定、楓が予想していた通りの顔をしていた。

 楓の心の内を知っているとでもいうような、何もかも見透かすような表情。
 楓がイヤというはずないという確信を持った顔。
 なのに、ほんの少しだけ。
 楓に――今まで仕事中やタカノで沢山語り合ってきた()にしかわからないくらいの――少しだけ自信がない星野の顔。
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