タイプではありませんが


 正面から星野の会話に乗るのは不利だ。
 楓は論点を少しだけズラした。
「なんか焦ってる?」
「……」
 無言は、肯定だ。
 そっか、と楓は息を吐いた。

「ごめん」
 星野が謝る。何について、とは尋ねなかった。察していたから。楓を言葉巧みに誘導し、体を重ねたことを悪いと思っているのだ、星野は。
「いいよ。合意の上だし」
 合意というより、GOサインを出したのは楓だ。
 家に入れたことも、キスを受け入れたことも、ベッドに誘ったのも楓だ。
 二人ともいい大人だ。星野だって、楓が流される可能性は頭にあっただろう。受け入れたのは楓だ。星野が負い目に感じる必要はない。
 ないのだが、頭を下げる星野に楓は疑問に思う。
  
 反省している顔を見せるならともかく、何故、彼は焦っていたのだろうか、と。
 いつも冷静な星野が焦る姿を見るのは、初めてと言っていいくらいだ。
 考えてみても楓には答えを見つけれない。ならば。
「なんでそんなに焦ってるの?」
 直接聞いてみるまでだ。
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