最弱スキルで転生した俺、気づけば英雄になっていた。
【最弱スキルで転生した俺、材料集めだって命がけ】
次の日。俺とアベルは材料集めを続行すべく森に入っていった。
「あっちの方に、薬草がたくさん生えてるってギルドのお姉さんが言ってたよ!」
アベルが元気よく、ぴょんっと跳ねる。
その手には、依頼の詳細が書かれたメモ。
【材料収集:薬草・香草・魔樹の葉】
(依頼、簡単そうに見えたけど……)
俺は汗を拭いながら周囲を見渡した。
ここは町の南に広がる、ちょっとした林。
だけど、ところどころ地面がボコボコしてたり、怪しい木が生えてたりする。
(魔物、出るって話だったよな……)
俺は短剣を抜き、周囲に警戒しながら歩く。
「クレムくん〜、これ見てこれ〜!」
アベルが嬉しそうに手招きしてくる。
彼女の前には、鮮やかな緑の草がびっしり群生していた。
香草らしい。甘い匂いがほんのり漂っている。
「すごい、見つけたんだな!」
「えへへ、たまたまね!」
にこにこ笑うアベル。
その隣で俺も膝をつき、薬草を慎重に摘み始めた。
「これで……あと魔樹の葉だけか。」
「うん。魔樹って、ちょっと奥の方に生えてるらしいよ!」
「そっか……よし、行こう!」
◆
さらに林の奥へと進んでいくと──空気が少し、変わった。
ざわざわと、木々が揺れる。
昼なのに、少しだけ薄暗い。
どこからか、ピチョン……と水音も聞こえる。
「なんか……ちょっと怖いな……」
「だいじょーぶだって! クレムくんには、ほら、微風スキルがあるもん!」
「いや、それそんな万能スキルじゃないからな!?」
そんなやり取りをしていると──
バサッ!!
木陰から何かが飛び出してきた。
「うわっ、でたっ!!」
飛び出してきたのは、
全身が蔓に覆われた、小型のモンスターだった。
《バインドプラント》
小さくても油断できない相手だ。
「来るよ、クレムくん!」
アベルが、杖をクルクルっと回して詠唱を始める。
「《ファイアショット》!」
ズバァン!!
小さな火球がバインドプラントを直撃。
一瞬で燃え上がり、バタバタと地面に崩れ落ちた。
(……すごっ!)
アベルの火力に目を丸くしてると、今度は別の方向から複数体、バサバサと現れた。
「わわ、まだいたーっ!」
「落ち着け、アベル! 俺たちで何とかする!」
(たぶん!)
俺は勇気を振り絞って、短剣を構える。
近づいてくるバインドプラントに向かって──
「《微風》!」
ブワァァァァァ……
そよ風のような風が、バインドプラントの動きを一瞬だけ鈍らせる。
「今だっ!」
アベルがすかさず火球を放ち、レオンの教えを思い出した俺も短剣で斬りかかった。
──ザシュッ!!
やった、手ごたえあり!
「やったねクレムくん!!」
「お、おう!!」
何とか数体を倒し、辺りが静かになる。
俺たちは息を整えながら、地面に落ちた《魔樹の葉》を拾い集めた。
「これで、材料全部揃ったね!」
「うん……でも、けっこうギリギリだったな……」
正直、ちょっとでも油断したらやられてたかもしれない。
材料集めだって、命がけだ。
俺たちは顔を見合わせ、笑った。
「でも、楽しかったね!」
「……まあな。」
心の底から、俺も笑った。
◆
帰り道。
アベルが、ふと俺に聞いてきた。
「ねぇ、クレムくんは、どうして冒険者になったの?」
「えっ……」
俺は、ちょっとだけ迷ったあとで、答えた。
「……俺、自分でも何ができるのか、確かめたくてさ。」
最弱スキルしかない自分。
でも、だからこそ。
何か、誰かの役に立てたらいいなって。
アベルは、きょとんとしたあと、ふわっと微笑んだ。
「クレムくん、かっこいいね!」
「へっ……!?」
「私も、一緒に頑張るからねっ!」
元気よく笑うアベルに、
俺もなんだか、胸が熱くなった。
(そっか──俺、ひとりじゃないんだ)
俺は、ぎゅっと短剣を握り直す。
そうだ。
どんなに弱くても、前に進めば、きっと──。
どこかに、俺だけの居場所がある。
(だから、俺は──)
「よし、じゃあルドばあちゃんに届けに行こっ!!」
「おう!」
俺とアベルは、ギルドから教わった小道を通って、町外れにある小さな家へ向かった。
「ここだ、クレム!」
トントン、と控えめにドアを叩く。
「はーい、どなたかねぇ?」
中からルド婆さんがひょっこり出てきた。
「おばあさんから依頼を受けたクレムと一緒に来たアベルです! お届けものを持ってきました!」
ルドおばあちゃんは、素材が入った袋を受け取ると、ぐいっと覗き込み、鼻をひくひく動かした。
「ふぅーむ、薬草もよし、香草もよし、魔樹の葉っぱも……おおっと、これは上物じゃないかい?」
急にテンションが上がった。
「ふっふっふ……さすがはクレムちゃんにアベルちゃん、見込み通りだねぇ〜!」
(いや、初対面のとき、紙切れ無言で突きつけてきたの、あなたじゃん……)
「おばあちゃん、それで報酬は……?」
アベルが首をかしげると、ルドおばあちゃんは「おっとっと」と手を叩いた。
「もちろんさぁ? ほら、持っていきな!」
そう言って差し出してきたのは──
あったかい布にくるまれた、焼きたてのクッキー。
「これ、今日焼いたばっかりの、ルド特製“パリふわクッキー”さぁ」
「おぉ〜!おいしそ〜!」
アベルが目を輝かせてクッキーを受け取る。
「ふふ……ひと口食べたら、もう戻れないさ。おばあちゃんのクッキーは魔性の味って、昔から言われててねぇ」
(それ言ってるの絶対この人だけだろ……)
でも──ひと口かじった瞬間。
「……う、うまっ……!!?」
(サクッ……ふわっ……じゅわ……な、なんだこの三段活用は!?)
「へっへっへ……惚れたかい?」
ルドおばあちゃんが、ニヤリと笑った。
俺は思わず、素直に頭を下げた。
「……ありがとうございます。マジで美味しいです」
「もちろんさぁ?」
その“クセのある”口調が、なぜかちょっと、癖になりそうだった。
「あ、じゃあ、失礼します。」
「あぁ。また来るんだぞ。」
俺はそう言われいっそりと心のなかでこう思った。
(もう、こんな苦労して来たくないな、)
アベルと俺は小屋を後にした。
ギルドの入り口をくぐると、夕方のざわめきが静かに広がっていた。
冒険者たちが一日を終えて報告を済ませたり、酒場でひと息ついたりしている。
アベルと俺も、受付に軽く報告を済ませて、ギルドのカフェスペースに腰を下ろした。
「クレムってさ、あんまり冒険者っぽくないよね!」
いきなり言われて、俺はむせそうになった。
「……そう思ってたなら、もうちょっと優しくして?」
「えー?だって、なんかこう……頼りないというか~、犬っぽいというか~、ぽや~っとしてるというか~」
「言いたい放題か!」
俺が思わず声をあげると、アベルはけらけら笑って、クッキーの最後のかけらを口に放り込んだ。
「でもさ、今日のクレム、ちょっとカッコよかったかも!」
「えっ」
「材料取りに行って、森で迷わなかったし!」
「基準ひっく……!」
「あと、クッキーめっちゃ褒めてたじゃん? ああいう時、ちゃんと素直に言えるの、いいと思う!」
「……ほめられてるのか、それ」
「うん! クレムって、なんか“がんばってるのがわかる”って感じでさ。応援したくなるよね!」
アベルの笑顔はまぶしすぎて、なんだか直視できなくて、俺は残った水を一気に飲み干した。
「……俺、やっぱまだまだだな。スキルは微風、武器は使いこなせない短剣。今日だって、ほとんどアベルに助けられてたし」
「でも、それでも一緒に前に進んでるじゃん!」
アベルは机の上で手をパチンと鳴らした。
「それって、すっごいことだと思うよ? 少しずつ、できることを増やしていけばいいんだし!」
俺は黙ってうなずいた。
なんか、そう言ってもらえると、ちょっとだけ心が軽くなる気がした。
ギルドを出ると、空はすっかり群青色に染まっていた。
宿に向かう途中、アベルは鼻歌を歌いながら軽やかに歩き、俺はその少し後ろをのんびりついていった。
ふと見上げた空に、星が一つ、光っていた。
(……また、明日も頑張るか)
そんなことを思いながら、俺は静かに宿の扉を開いた。
次の日。俺とアベルは材料集めを続行すべく森に入っていった。
「あっちの方に、薬草がたくさん生えてるってギルドのお姉さんが言ってたよ!」
アベルが元気よく、ぴょんっと跳ねる。
その手には、依頼の詳細が書かれたメモ。
【材料収集:薬草・香草・魔樹の葉】
(依頼、簡単そうに見えたけど……)
俺は汗を拭いながら周囲を見渡した。
ここは町の南に広がる、ちょっとした林。
だけど、ところどころ地面がボコボコしてたり、怪しい木が生えてたりする。
(魔物、出るって話だったよな……)
俺は短剣を抜き、周囲に警戒しながら歩く。
「クレムくん〜、これ見てこれ〜!」
アベルが嬉しそうに手招きしてくる。
彼女の前には、鮮やかな緑の草がびっしり群生していた。
香草らしい。甘い匂いがほんのり漂っている。
「すごい、見つけたんだな!」
「えへへ、たまたまね!」
にこにこ笑うアベル。
その隣で俺も膝をつき、薬草を慎重に摘み始めた。
「これで……あと魔樹の葉だけか。」
「うん。魔樹って、ちょっと奥の方に生えてるらしいよ!」
「そっか……よし、行こう!」
◆
さらに林の奥へと進んでいくと──空気が少し、変わった。
ざわざわと、木々が揺れる。
昼なのに、少しだけ薄暗い。
どこからか、ピチョン……と水音も聞こえる。
「なんか……ちょっと怖いな……」
「だいじょーぶだって! クレムくんには、ほら、微風スキルがあるもん!」
「いや、それそんな万能スキルじゃないからな!?」
そんなやり取りをしていると──
バサッ!!
木陰から何かが飛び出してきた。
「うわっ、でたっ!!」
飛び出してきたのは、
全身が蔓に覆われた、小型のモンスターだった。
《バインドプラント》
小さくても油断できない相手だ。
「来るよ、クレムくん!」
アベルが、杖をクルクルっと回して詠唱を始める。
「《ファイアショット》!」
ズバァン!!
小さな火球がバインドプラントを直撃。
一瞬で燃え上がり、バタバタと地面に崩れ落ちた。
(……すごっ!)
アベルの火力に目を丸くしてると、今度は別の方向から複数体、バサバサと現れた。
「わわ、まだいたーっ!」
「落ち着け、アベル! 俺たちで何とかする!」
(たぶん!)
俺は勇気を振り絞って、短剣を構える。
近づいてくるバインドプラントに向かって──
「《微風》!」
ブワァァァァァ……
そよ風のような風が、バインドプラントの動きを一瞬だけ鈍らせる。
「今だっ!」
アベルがすかさず火球を放ち、レオンの教えを思い出した俺も短剣で斬りかかった。
──ザシュッ!!
やった、手ごたえあり!
「やったねクレムくん!!」
「お、おう!!」
何とか数体を倒し、辺りが静かになる。
俺たちは息を整えながら、地面に落ちた《魔樹の葉》を拾い集めた。
「これで、材料全部揃ったね!」
「うん……でも、けっこうギリギリだったな……」
正直、ちょっとでも油断したらやられてたかもしれない。
材料集めだって、命がけだ。
俺たちは顔を見合わせ、笑った。
「でも、楽しかったね!」
「……まあな。」
心の底から、俺も笑った。
◆
帰り道。
アベルが、ふと俺に聞いてきた。
「ねぇ、クレムくんは、どうして冒険者になったの?」
「えっ……」
俺は、ちょっとだけ迷ったあとで、答えた。
「……俺、自分でも何ができるのか、確かめたくてさ。」
最弱スキルしかない自分。
でも、だからこそ。
何か、誰かの役に立てたらいいなって。
アベルは、きょとんとしたあと、ふわっと微笑んだ。
「クレムくん、かっこいいね!」
「へっ……!?」
「私も、一緒に頑張るからねっ!」
元気よく笑うアベルに、
俺もなんだか、胸が熱くなった。
(そっか──俺、ひとりじゃないんだ)
俺は、ぎゅっと短剣を握り直す。
そうだ。
どんなに弱くても、前に進めば、きっと──。
どこかに、俺だけの居場所がある。
(だから、俺は──)
「よし、じゃあルドばあちゃんに届けに行こっ!!」
「おう!」
俺とアベルは、ギルドから教わった小道を通って、町外れにある小さな家へ向かった。
「ここだ、クレム!」
トントン、と控えめにドアを叩く。
「はーい、どなたかねぇ?」
中からルド婆さんがひょっこり出てきた。
「おばあさんから依頼を受けたクレムと一緒に来たアベルです! お届けものを持ってきました!」
ルドおばあちゃんは、素材が入った袋を受け取ると、ぐいっと覗き込み、鼻をひくひく動かした。
「ふぅーむ、薬草もよし、香草もよし、魔樹の葉っぱも……おおっと、これは上物じゃないかい?」
急にテンションが上がった。
「ふっふっふ……さすがはクレムちゃんにアベルちゃん、見込み通りだねぇ〜!」
(いや、初対面のとき、紙切れ無言で突きつけてきたの、あなたじゃん……)
「おばあちゃん、それで報酬は……?」
アベルが首をかしげると、ルドおばあちゃんは「おっとっと」と手を叩いた。
「もちろんさぁ? ほら、持っていきな!」
そう言って差し出してきたのは──
あったかい布にくるまれた、焼きたてのクッキー。
「これ、今日焼いたばっかりの、ルド特製“パリふわクッキー”さぁ」
「おぉ〜!おいしそ〜!」
アベルが目を輝かせてクッキーを受け取る。
「ふふ……ひと口食べたら、もう戻れないさ。おばあちゃんのクッキーは魔性の味って、昔から言われててねぇ」
(それ言ってるの絶対この人だけだろ……)
でも──ひと口かじった瞬間。
「……う、うまっ……!!?」
(サクッ……ふわっ……じゅわ……な、なんだこの三段活用は!?)
「へっへっへ……惚れたかい?」
ルドおばあちゃんが、ニヤリと笑った。
俺は思わず、素直に頭を下げた。
「……ありがとうございます。マジで美味しいです」
「もちろんさぁ?」
その“クセのある”口調が、なぜかちょっと、癖になりそうだった。
「あ、じゃあ、失礼します。」
「あぁ。また来るんだぞ。」
俺はそう言われいっそりと心のなかでこう思った。
(もう、こんな苦労して来たくないな、)
アベルと俺は小屋を後にした。
ギルドの入り口をくぐると、夕方のざわめきが静かに広がっていた。
冒険者たちが一日を終えて報告を済ませたり、酒場でひと息ついたりしている。
アベルと俺も、受付に軽く報告を済ませて、ギルドのカフェスペースに腰を下ろした。
「クレムってさ、あんまり冒険者っぽくないよね!」
いきなり言われて、俺はむせそうになった。
「……そう思ってたなら、もうちょっと優しくして?」
「えー?だって、なんかこう……頼りないというか~、犬っぽいというか~、ぽや~っとしてるというか~」
「言いたい放題か!」
俺が思わず声をあげると、アベルはけらけら笑って、クッキーの最後のかけらを口に放り込んだ。
「でもさ、今日のクレム、ちょっとカッコよかったかも!」
「えっ」
「材料取りに行って、森で迷わなかったし!」
「基準ひっく……!」
「あと、クッキーめっちゃ褒めてたじゃん? ああいう時、ちゃんと素直に言えるの、いいと思う!」
「……ほめられてるのか、それ」
「うん! クレムって、なんか“がんばってるのがわかる”って感じでさ。応援したくなるよね!」
アベルの笑顔はまぶしすぎて、なんだか直視できなくて、俺は残った水を一気に飲み干した。
「……俺、やっぱまだまだだな。スキルは微風、武器は使いこなせない短剣。今日だって、ほとんどアベルに助けられてたし」
「でも、それでも一緒に前に進んでるじゃん!」
アベルは机の上で手をパチンと鳴らした。
「それって、すっごいことだと思うよ? 少しずつ、できることを増やしていけばいいんだし!」
俺は黙ってうなずいた。
なんか、そう言ってもらえると、ちょっとだけ心が軽くなる気がした。
ギルドを出ると、空はすっかり群青色に染まっていた。
宿に向かう途中、アベルは鼻歌を歌いながら軽やかに歩き、俺はその少し後ろをのんびりついていった。
ふと見上げた空に、星が一つ、光っていた。
(……また、明日も頑張るか)
そんなことを思いながら、俺は静かに宿の扉を開いた。