最弱スキルで転生した俺、気づけば英雄になっていた。
──その時、森の奥から、ものすごい爆発音が響いた。
「……アベルだな」
クレムとネーヴェは、ほぼ同時に言った。
***
数時間前。
「“誰にも頼らない”って言ったけど……
あれ、こっちって帰り道どっち???」
アベルは見事に道に迷っていた。地図?そんなもの、心の中に刻んだ!とか言ってたくせに、実際刻んだのはおやつの時間だった。
そして──
バシュウウゥン!!!
足元に現れた謎の魔法陣が、アベルを問答無用で真っ逆さまに落とした。
「ちょっ!わたし落ちるの!?え、え、これって罠?え、罠ってこんな雑に作動するの!?誰設計!?ちょっと出てきて!?」
ドカン!!
「痛あぁあああッ!!!お尻がああぁぁああああ!!」
そこは、妙にキラキラした謎の空間だった。謎の水晶。謎の祭壇。謎の「ようこそ♥氷封の試練へ」というラブリーすぎるフォントの看板。
「……なにこれ。女子向けイベント会場?」
アベル、完全にテンパる。
***
一方その頃、クレムたちはアベルの気配を感じて森の奥へ。
「……これは罠の魔法陣跡。でも、こんな雑な罠にかかるやつなんて──」
「アベルだな」
「うん」
二人とも即答。
「というかさぁ、ネーヴェ……さっきからペンダント、めっちゃ光ってるんだけど……」
「うん。多分、“そろそろ暴走してもいいよタイム”って合図」
「そんな通知あってたまるか!!」
そこへ、ド派手に爆発した光の柱が上がった。
***
祭壇では、アベルが何やらよくわからん氷のトカゲ(しかもハート型)に追いかけられていた。
「キャー!!トカゲが恋してきてる!!やだやだやだっ!」
そんな中、上空からド派手に降ってきたネーヴェ。着地はまさかの……
ズドォン!!!
「ううっ……足首を……ちょっとだけ……ひねったかも……」
クレム「いや、ポーズめっちゃキメてたじゃん!?今の絶対演出入ってたじゃん!?」
すると──ネーヴェのペンダントが眩しく輝き出す。
「……力を解放する。今だけ、少しだけ──」
「えっ、待って待って!何そのフラグびんびんセリフ!爆発オチだけはやめて!?!」
ネーヴェはふわりと浮かび、黒いドレスの裾がなびく。
「氷結の契約──アナザー・エンゲージモード、解放」
クレム「なんでその名前だけ中二病全開!?」
ネーヴェ「……別に。昔つけられたから仕方ないの」
冷気が走る。水晶が砕け、ハート型トカゲはカチンコチンに。
アベル「わぁい!冷凍保存!」
クレム「うるさいな!?命の危機だったんじゃないの!?」
そして──ふと、ネーヴェがクレムに向き直る。
「……クレム。あなたが、“私を守る”って言ったあの日のこと、思い出したわ」
クレム「えっ、やめて、急に正気に戻らないで!ツッコミが追いつかない!!」
ネーヴェは微笑む。
「あなたは昔……『どんな罪を背負っていても、君は僕が守る』って、言ってくれたの」
「ええええええええええ!?そんなキザなセリフ俺言ってた!?だれ!?別人!?クレム(前世ver.)なにしてんの!?」
アベル「……あーあ。やっぱりこのふたり、前世からの運命なんじゃん。……うう、ジェラシー!!」
クレム「いやだからギャグで押してくれ!!重くするなッ!!」
ネーヴェ「……でも、今は“こっちの”クレムの隣にいられるのが、一番幸せよ」
アベル「ぐっ……し、嫉妬に負けない!絶対次は……!」
どたばたと叫び声が響く中、謎空間は崩れはじめた。
「わあぁ!!脱出イベント!?!!」
「全員ツッコめ!!」
***
──こうして今日も、なんとか一日が終わる。