最弱スキルで転生した俺、気づけば英雄になっていた。
第五章、【最弱スキルで転生した俺、ついに魔物の群れに遭遇する】

「……あれ? なんか、遠くからドドドドって音が……?」

宿のベッドでぐーっと伸びをして外に出た俺は、地面が微かに震えていることに気づいた。

(なんだ、地震か? いや、違う。もっと……生き物っぽい揺れだ)

不安に思っていると、町の通りを慌ただしく走る人たちが目に入った。
叫び声が飛び交う。

「魔物の群れだー!! 避難しろー!!」

えっ……魔物の群れ!? こんな駆け出しの町に!?
しかも、まだろくに装備もない俺が!?

(どうする!?どうする俺!?)

心臓がバクバクと跳ねる。逃げるべきか、それとも──。

そのとき、宿の玄関からミーナが顔を出した。

「君! ギルドが町の防衛に協力してくれる人を募ってるよ! ……手伝ってくれる?」

ミーナは不安そうな顔で俺を見つめた。

──俺は知っている。
このタイミングで逃げたら、きっと一生後悔するって。

「……わかった。やるよ!」

震える手を握りしめて、俺は頷いた。

でも──

(俺、スキル『微風』しかないんだけどな!!!)

運命の悪戯を呪いながら、俺は武器もろくに持たず、ギルドへ向かって走り出した。


ギルド前には、すでにたくさんの冒険者たちが集まっていた。
剣を構える者、弓をつがえる者、魔法の詠唱を始める者──
みんな、それぞれの武器や魔法で、これから来る魔物たちに備えている。

俺は、その中で完全に浮いていた。

(俺、装備はボロい短剣一本だけだし、スキルも『微風』しかないし……)

正直、何の役にも立てる気がしない。
でも、もう後戻りはできない。

(もう、笑うしかねぇ……)

周囲からは、「あいつ大丈夫か……?」っていう視線が突き刺さる。

(たぶん、俺が一番不安だよ!!)

そんな俺を、どこからかミーナが見ていた。
彼女は小さくガッツポーズを作って、「がんばれ!」って口パクしてくる。

(やるしかねぇ……!)

そして、ついに──

地響きと共に、森の向こうから魔物たちが現れた。

「うわぁあああああああああああ!!!!」

叫びながら突っ込んでくるのは、野犬みたいな魔物、ちっこいゴブリン、そして、でっっっかいイノシシみたいな奴まで!!

(いや無理だろ!!)

俺は心の中で絶叫した。

だが、逃げる選択肢はない。

ギルドのおっさんが叫ぶ。

「全員、構えろー!! 奴らを町に入れるな!!」

冒険者たちが一斉に武器を構えた。

俺も、ガタガタ震えながら、洗濯竿(仮)を握りしめる。

(せめて……誰かの足を引っ張らないように!!)

そう、必死に願った。

……その瞬間だった。

「ぐるるるっ!!」

一匹の魔物が俺めがけて飛びかかってきた!

(ああもうダメだあああああ!!)

無我夢中で木の棒を振り回した。

──バサァァッ!!

すると──

「……え?」

ふわり、と風が吹いた。

俺の前にいた魔物が、バランスを崩してその場にズテーンと転んだ。

(え、えええ!? 今の……!?)

【スキル『微風』が発動しました】

頭の中に、ひときわ冷静なシステム音が響いた。

(今のが……俺のスキル!?)

俺は驚きすぎてしばらく固まった。

でも、魔物は転んでそのまま他の冒険者に討たれた。

「おい、あいつ……! なんかすげえタイミングで援護してねぇか!?」

「意外とやるじゃねーか、あの棒持ち!!」

周囲から、ちょっとだけ歓声が上がる。

(え……え、俺、役に立った!?)

「いいぞ、その調子だ新人!! その短剣で風を起こせ!!」

ギルドのおっさんがめちゃくちゃ適当な指示を飛ばしてきた。

(そんなのでいいのかよ!!)

だけど、不思議と体が動いた。
もうこうなったら、なんでもやってやる!

俺は必死に短剣を振り回す。
微かな風がまたふわっと吹く。

そのたびに、魔物たちは微妙にタイミングを外され、
他の冒険者たちに叩き伏せられていく。

(なにこれ……!めちゃくちゃ地味だけど、超大事なポジションじゃねぇか!!)

こうして──

最弱スキルしか持ってない俺は、
町を守る戦いで、地味に大活躍することになったのだった。

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