アラ還の、恋は野を越え山越え谷越えて
皆言いたいことを言って帰っていった。
そしてまた二人になった。

「伝えたいことを話していたつもりだったけど、通じてなかったこともあったようだね」

いつもそう。
隠し事なんかしてないのに、話が伝わってない。

「由佳はどうしたい?
俺は退院したら直ぐにはうちに来て欲しい。なにかがあったら心配だから。次の診察まででも良いし、あとは紗依ちゃんと過ごしても良い。そして紗依ちゃんが結婚したらうちに戻っておいで」
由佳は頷いて、「そうする」って答えてくれた。

「あとは、やっぱり籍はいれて欲しい。
うちの病院だったから良かったけれど、重傷じゃなかったから良かったけれど、俺は由佳とは家族ではない。
もし、重傷でうちの病院じゃなかったら…。
そんなことを考えてたら…やっぱり籍はいれて欲しい、少しでも早く」

嫌だとは言わなかった。
でも『そうする』とも言わなかった。
この事についてはおれるつもりはない。

「以前話してた、認知症になっても籍は関係なく見るつもりだし、相続だって、由佳が放棄すれば紗依ちゃんに相続してもらうように弁護士に手続きをする。俺のことを看たくなければ放棄してもかまわない」

「そんな寂しいことを言わないで…」
もう一押しか、
「紗依ちゃんが認めてくれたら…、いいね」
ようやく頷いてくれた。

< 24 / 40 >

この作品をシェア

pagetop