アラ還の、恋は野を越え山越え谷越えて
話してたら、誰かがきた。
じいさんが秘書に車椅子で連れられて入ってきた。

「この度は本当に申し訳ないことをした。
いくら慌てていたといっても、取り返しがつかんことを…」
深々と頭を下げた。
俺の大切な人が被害者で怪我をしたことに驚いたそうだ。
誰が被害者でも同じなのに。
「先生、今回の件で免許は返納することにしました。
もう少しもう少しって、引き伸ばすのは止めて鈴木君に運転手になってもらおうかと思ってます」

由佳にはじいさんのこと、話しはしてたけど会ったのは初めてだ。
「明日、退院と聞いてお邪魔しました。お元気で、もし少しでも何かあったら連絡をしてください」

部屋から出ていこうとしたとき、由佳が声をかけた。
「ご丁寧にありがとうございます。大変でしたけど、結果、色々考える時間をもつことができました。柏原さんもお元気で」

じいさんは頭を下げて、部屋から出ていった。

「良かったのか、これで?」
清々しい顔をして、
「何が? こんなことがなかったら、結婚なんて考えられなかった。
それより匠さんの方は大丈夫?
環さんが言ってた、こんな私なんかより、いっぱい声をかけてくださるかたがいるんじゃないですか?」
まったく環は余計なことを言って。

「私は人を憎んで嫌な気持ちになるより、優しくして、私っていい人だなぁって思ってる方が幸せじゃないですか」
いつものポジティブな由佳に戻って良かった。

由佳を傷つけたことは気に入らないが、色々気付くことが出来たことには良かったのかもしれない。

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