アラ還の、恋は野を越え山越え谷越えて
~匠 said ~

なにが中止だ。
この歳になって、事後報告で良いと思ってた。

直ぐにお袋に連絡をした。
お袋も姉さんからあらかた聞いているみたいだけど、話すと『なら今度の日曜日に…』なんて呑気なことを言っている。
そんなゆっくりしてられるか。
直ぐに近くでランチの予約をいれた。

「挨拶すればいいんだろ」
そんな問題じゃないんだけど…なんて言ってるが、由佳に会わせてると来年でも終わらない。
それより、昨日退院したばかりなのに、あまり連れ回すほうが気になるのだが。

遅れるわけにはいかないと、朝食を食べたすぐ後なのに、出掛ける準備を始め出した。
そんなに急いでも、約束の時間にはまだあるのに。

店につくと、すでにお袋はもう来ていた。
『だから言ってたのに』って顔をして睨み付けるが、ちっとも恐くない。
お袋の待つテーブルに急いだ。

「この度は、急にお時間を取っていただき…」
あまりにも嬉しそうに笑っている母を見て由佳も言葉が止まった。
「匠、会わせてくれるのが遅すぎですよ。以前会ったとはいえ、こんな嬉しいお話、もっと早く教えてくれたら良かったのに」
お袋が由佳を気に入ってるのはわかってた。
だから会わせるのはあとでも良いからって言ってたんだ。
「由佳さん、怪我をしたって聞いたけれど大丈夫?」
俺の返事も待たず一人で喋っている。
「ありがとうございます。昨日退院して…」
「まぁ、昨日退院?そんな彼女を連れ回すなんて、なに考えてるの」
だから今日は役所に行くだけにしたかったのに。

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