アラ還の、恋は野を越え山越え谷越えて
由佳は慌ててついてはきてくれたが、まったくお喋りな二人には困ったもんだ。

区役所に行き書類を提出すると『おめでとうございます』と、決まり文句の言葉をもらい、受理された。
あまりにも事務的な受け答えに、甚だ拍子抜けだが、これで晴れて由佳と夫婦になることができた。
あとはズブズブに甘やかしてやる。

「今日の夕飯、外にする?それとも家がいい?」
レパートリーは多くないがレシピを見ながらならなんとかなるだろう。
「どちらでもいいけど、なにか作りましょうか?」
いや、由佳をゆっくりさせたいのに作らせるわけにはいかない。
「由佳が作るのなら外にする」
予約をいれようとしたら、
「リハビリを兼ねて一緒に作りませんか?」
なにこの楽しそうな提案は!
「カレーくらいならそんなに手間もかからないし」
今まで経験したことがない夫婦らしいこと。
以前の結婚生活ではなかったこと、二人共医者で忙しかった。
干渉しないのが楽だったし寂しくはなかった。
それが当たり前だと思っていた。

帰りにスーパーに寄ることにした。
「これからは毎日作るのだから、多少食材は多めでもいいですよね」
カートを押すのも案外楽しい。
新しい生活が今日から始まる。

食材を両手にもってマンションに帰った。
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