S L S -病弱天然ちゃんはドSイケメンに溺愛される-
黒川廉 side
あの日から、俺の人生は狂った。
五年前――当直の夜、救急に運び込まれてきた若い女の子。顔色は灰色、意識レベルも低下。診断は、拡張型心筋症による致死性不整脈。
その瞬間、名前を聞く前に、俺は彼女の顔を見て分かった。
「白田凛――あのときの子か」
学生時代、ただ一人、気になっていた研修医の後輩。
線が細くて、頼りなさそうで、でも妙に芯があって。
“人を救いたい”なんて、綺麗事を本気で信じてるような馬鹿正直な女だった。
……なのに、その命が、俺の目の前で、あっけなく消えかけていた。
マニュアル通りにやっていたら、間に合わなかった。
だから俺は、上に報告せずに、自分の研究段階にあった“未認可の治療法”を使った。
――規則違反。倫理的に、完全にアウトだ。
でも、構わなかった。
俺は、ただ生かしたかった。
この女の、泣きそうな顔が、二度と見れなくなるなんて、そんなの、冗談でも許せなかった。
手術は成功した。それからだ。俺は凛を監視するようになった。
病歴も、体調も、勤務スケジュールも。全部把握して、裏で調整して、無理させないようにしてきた。
誰にも言わずに、全部、俺がコントロールしてた。
凛は俺に気づいてないフリをしてたけど、気づいてたはずだ。
だから俺が口を出せば、どんなに文句を言っても、最後は従った。
俺の手で救った命――もう二度と、他の誰にも触らせる気はなかった。
『お前が死にかけたあの日。俺は……あの手術で“規則”を破ったんだ』
電話の向こうで、凛は息を呑んだ気配を見せた。
「……どうして、そんなことまで……?」
『お前が、俺にとって“最初で最後”の執着だからだよ』
五年前――当直の夜、救急に運び込まれてきた若い女の子。顔色は灰色、意識レベルも低下。診断は、拡張型心筋症による致死性不整脈。
その瞬間、名前を聞く前に、俺は彼女の顔を見て分かった。
「白田凛――あのときの子か」
学生時代、ただ一人、気になっていた研修医の後輩。
線が細くて、頼りなさそうで、でも妙に芯があって。
“人を救いたい”なんて、綺麗事を本気で信じてるような馬鹿正直な女だった。
……なのに、その命が、俺の目の前で、あっけなく消えかけていた。
マニュアル通りにやっていたら、間に合わなかった。
だから俺は、上に報告せずに、自分の研究段階にあった“未認可の治療法”を使った。
――規則違反。倫理的に、完全にアウトだ。
でも、構わなかった。
俺は、ただ生かしたかった。
この女の、泣きそうな顔が、二度と見れなくなるなんて、そんなの、冗談でも許せなかった。
手術は成功した。それからだ。俺は凛を監視するようになった。
病歴も、体調も、勤務スケジュールも。全部把握して、裏で調整して、無理させないようにしてきた。
誰にも言わずに、全部、俺がコントロールしてた。
凛は俺に気づいてないフリをしてたけど、気づいてたはずだ。
だから俺が口を出せば、どんなに文句を言っても、最後は従った。
俺の手で救った命――もう二度と、他の誰にも触らせる気はなかった。
『お前が死にかけたあの日。俺は……あの手術で“規則”を破ったんだ』
電話の向こうで、凛は息を呑んだ気配を見せた。
「……どうして、そんなことまで……?」
『お前が、俺にとって“最初で最後”の執着だからだよ』