この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「ねえ、慶介」
「ん?」

 明日香は慶介に抱きついたまま、顔だけ上げて瞳を合わせてくる。

「まだ慶介といたい」

 今日はどうしたというのだろうか。明日香のかわいさが爆発している。

 このかわいい願いをいったい誰が断れるというのだろうか。

「じゃあ、二軒目探すか」

 独り言のようにつぶやいたその言葉に対し、明日香は慶介の胸元に顔をうずめ、ブンブンと首を横に振る。

「二人で過ごせるところがいい」

 なかなかに心臓に悪い台詞を聞かされてドキリとするが、冷静になって考える。

 個室のある店に入れたらいいが、予約なしでは難しいかもしれない。ほかにいいところがあるだろうかと考え、最初に思いついたところを提案してみる。

「カラオケでも入るか?」

 明日香は再び首を横に振っている。二人ともカラオケの趣味はないから、この反応になるのはしかたない。だが、ほかに二人で過ごせる場所があるだろうかと考えていれば、明日香がなにやらつぶやく。

「――がいい」
「ごめん、聞こえなかった」

 胸元に顔をうずめたままだから、はっきりと聞き取れなかった。今度はちゃんと聞き取れるように、しっかりと耳を傾ける。

 明日香はゆっくりと顔を上げると、慶介を真っ直ぐに見つめながら、先ほどの言葉をもう一度口にしてくれた。
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