この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~

3. 抑えられない想い

 初めて足を踏み入れた慶介の部屋は、モノトーンの家具が必要最低限あるだけのとてもシンプルな部屋。けれど、キッチンには調味料がたくさん並んでおり、冷蔵庫も一人暮らしにしては大型のものと、食にだけはこだわりがあるのが見て取れる。

 実に慶介らしい部屋に笑みが漏れるとともに、彼のプライベートな空間に足を踏み入れていることに胸が高鳴る。

 家に行きたいなどと随分大胆なことを言ってしまったが、ここに来られた今、その願いを口にした自分を褒めてやりたいと思う。ようやく慶介と二人きりの空間で過ごせる時間を手に入れたのだから。

 しかしながら、明日香は最初からそれを狙っていたわけではない。ただただ本音が漏れ出てしまっただけだ。

 なにしろ今日はひどく酔っていたのだ。

 酒にではなく、慶介の言葉に。

 飲み会終了間際に偶然耳にした慶介と部長の会話。慶介の口から語られる明日香への思いは、明日香を舞い上がらせるには十分だった。

 あんな気持ちを聞かせられたら、もう彼への想いを抑えることなどできなかった。

 どうしても今日は慶介と過ごしたくて、無理なお願いを口にしてしまった。断られる可能性の方が高いと思っていたから、受け入れてもらったことにこれ以上ないほどの喜びを覚えている。今、とても幸福な気持ちでいっぱいだ。
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