この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 明日香は部屋の隅に立ち、室内をゆっくりと見回す。好きな人の部屋というだけで、なにを見ても楽しい。

 一人でわくわくと心を躍らせていたら、慶介が座卓を指さしながら話しかけてきた。

「適当につまみ用意するから、明日香はそこに座っとけ」
「うん、ありがとう」

 促された場所に腰を下ろし、慶介の方へ視線を向ける。キッチンに立っている後姿に胸がときめく。本物の恋人同士としか思えないようなこの状況に、明日香は自然とにやけてしまう。

 明日香は緩んだ顔のまま、ずっとその背中を見つめていた。

 ほどなくして慶介はつまみと飲み物を持ってやって来た。

「なんだよ。にこにこして」

 緩んだ顔を引き締めていたつもりだったが、どうやらまだ足りなかったようだ。それならばしかたないと、素直な気持ちを伝える。

「慶介とこうしてゆっくり過ごせるのが嬉しいなって思って」
「ふっ、そうか。それはよかったな」

 明日香が嬉しさを隠さずに頷けば、慶介も嬉しそうに微笑んでくれた。

「明日香は今日の飲み会、随分と楽しそうだったな。なに盛り上がってたんだ?」
「あー、あれはね――」

 慶介が用意してくれたつまみを食べながら、二人で語り合う。していることは普段と特に変わらないが、この特別な空間でそれをすれば、いつもよりもずっと楽しい。

 時間は瞬く間に過ぎていき、終電の時間が迫ってきた。
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