この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 一度甘い口づけを交わした後、いよいよそのときが訪れるという状況に、明日香の心臓はドクドクとうるさいほど強く脈打つ。

 期待と緊張が入り混じって落ち着かない。目を瞑り、胸元でキュッと手を握りしめ、そのときを待つ。

 そうして確かな質感のものが触れたと思った直後、明日香の口からうめき声が漏れた。

「うっ……」
「っ! 明日香……もしかして、初めてなのか?」

 小さくこくりと頷けば、慶介は強く眉根を寄せて、明日香を叱ってくる。

「バカ! それを早く言え!」

 隠したかったわけではないが、慶介に初めてだと知られれば、してくれないのではないかという小さな不安があって口にできなかった。

 しかし、こうしてばれてしまった今、やはり言っておくべきだったと深く反省する。

「……ごめん」
「今まで付き合ってたやつとはしなかったのかよ」
「そうなる前に別れてたから。どうしてもキスより先は無理だった……」

 本当に好きな人とでないとそこには踏み込めなかった。いい雰囲気になっても、無意識に拒絶してしまって一度もできなかったのだ。

「……今も無理してるんじゃないか?」

 それはないと大きく首を横に振る。

「してないよ。慶介となら大丈夫」

 慶介とならできる。いや、慶介とでないとダメだ。本当に好いている人とでないと絶対にできない。

 だから、大丈夫だと言えるのは慶介だけなのだと真っ直ぐに見つめれば、慶介はなぜか明日香から離れてしまう。

「えっ……」

 やはり初めてではダメなのかとショックで声を漏らせば、慶介はそっと顔を寄せて優しい表情で囁く。

「今さらやめたりしない。でも、このままだとさすがにつらいだろ。できるだけほぐすから」
「ほぐっ!?」

 生々しい表現に明日香は顔を赤らめる。

「痛いのは嫌だろ?」

 赤い顔をしたまま小さく頷く。ある程度は頑張るつもりでいるが、痛みが少ないに越したことはない。

「だったら、全部教えろ。なにがよくて、なにがダメなのか。痛い思いはさせたくない」

 想像するだけで恥ずかしいが、明日香のためにやってくれようとしていることなのだから、素直に応じるべきだろう。

 明日香はもう一度こくりと頷いた。
< 120 / 184 >

この作品をシェア

pagetop