この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 明日香はすぐにスマホを操作して、電話に応答する。

「もしもし」
「あ、明日香。今、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
「ありがとう。あのね、如月味噌なんだけど、継ぎたいって人が現れたのよ」
「えっ」

 寝耳に水の情報に大きな声が漏れた。

 少し前に母と話したときには、やはりほかに引き継げそうな人はいないという話だった。

 親戚の中で跡を継ぎたいと望んでくれる人は一人もおらず、従業員の中にも目ぼしい人はいないと言っていた。

 それがいったいどこから現れたのだろうか。恐る恐るその正体を尋ねる。

「……誰なの?」
「それがね、うちの味噌を卸してる飲食店のオーナーさんなの」
「んん? なんで飲食店のオーナーさんが?」

 あまりに意外過ぎる立候補者にその疑問が漏れ出た。食という点で関連してはいるが、急に味噌づくりをやりたいと思うものだろうか。明日香は首を傾げる。

「うちの味噌をすごく愛してくれているみたいでね。将来的に商売をたたむかもしれないって話をしたら、自分に譲ってくださいって言われたのよ」

 譲るという言い方に一つの疑問を抱く。味噌づくり自体を引き継ぎたいのではなく、経営だけを引き継ぎたいという意味なのではないかと。

 飲食店のオーナーだということを鑑みても、その意味の方が納得がいく。
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