この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 それからしばらくして慶介が戻ってきたが、明日香は如月味噌のことが気になって、心ここにあらずの状態。

 慶介がそれに気づかないはずがなく、心配の声をかけてきた。

「明日香。難しい顔してどうした?」

 明日香を気遣う視線に、今の悩みを正直に打ち明けたくなる。

「慶介、あのさ」
「ん?」

 将来のことについて相談したいことがある。そう言おうと口を開いてみるが、その言葉は出てこない。慶介に告げるのがとても怖い。

 結局、明日香の口からは誤魔化しの言葉しか出てこなかった。

「……今日の夕飯なにがいい?」
「ふっ、それを真剣に考えてたのか。本当に食べることが好きだな、明日香は」

 笑顔を取り繕ってやり過ごす。

 本当に情けないことこの上ない。

 いつもの明日香であれば、自分が感じるままに真っ直ぐ突き進むが、今はそれがどうしてもできない。慶介との今の関係が心地よすぎて、決断しきれないのだ。

 慶介と離れたくないという思いと、如月味噌を継ぎたいという思いが、ゆらゆらと揺れ動いている。

 慶介と本当の恋人になれていたなら、遠距離恋愛をするという選択肢も生まれただろうが、二人の関係は未だ恋人のようなもの。まだ本物には至っていないから、どうしても別れが付きまとう。

 もしも慶介に正直に告げたならば、明日香の背中を押してくれそうな気がするが、それは同時に彼との別れを意味するのだ。

 先に想いを告白してしまうという方法もあるにはあるが、それをして断られたときが怖い。好きな人と過ごす幸せを知った今、それを失うことが怖くてたまらないのだ。

 如月味噌のことも、慶介との関係も、どっちつかずの自分に嫌気が差す。こんな状態は自分らしくないと思うのに、如月味噌への愛も、慶介への愛も深すぎて、簡単に決めることはできなかった。
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