この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~

2. 交際宣言

 カタカタとパソコンのキーボードを打つ音ばかりが響く空間。本社勤務中の開発部員は、明日香も含め皆デスクワークをしており、室内はとても静かだ。

 だが、そんな空間に突如パシンという高く乾いた音が鳴り響いた。

「っ!」

 頬に強い衝撃を受け、明日香は驚いて顔を上げる。打たれた頬を手で押さえながら、見上げてみれば、そこに立っていたのは矢沢だった。

「あんたのせいよ……あんたのせいで!」

 ひどく取り乱した矢沢がもう一度手を振り上げる。咄嗟に両腕で顔を覆うと、それをさらに別のもので包み込まれた。

「如月っ!」

 慶介が身を挺して明日香を庇ってくれている。

「どうしてあんたばっかり……あんたのせいで、私の人生めちゃくちゃよ!」

 その言葉を聞いて、とうとう彼女に重い現実が突きつけられたのだと悟った。

 矢沢は少し前に部長から呼び出されていた。きっと自らが犯した罪について言及され、責任を負わされることとなったのだろう。

 明日香は悲しい気持ちになる。本当に矢沢はその罪を犯していたのだと。

 彼女の罪が明らかとなったのは、たった三日前のこと。ホテルへの連れ込み事件の事実確認がきっかけだった。
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