この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 再び二人でテレビを見始めるが、今流れている内容を理解する間もなく、明日香から質問を投げかけられる。

「ねえ、昨日はなにしてたの?」

 今、最も聞かれたくない質問をされて、思わずドキリとする。慶介はしばしの沈黙を挟んでから答える。

「……あの味噌を使ったレシピを考えてた。いろいろな料理に合いそうだからな」

 嘘は言っていない。昼頃までは確かにレシピを考えていたのだ。

 一瞬焦ってしまったが、なんとか普通に答えられたから大丈夫だろう。ここからは味噌の話題に発展するに違いないと慶介は安堵するが、その予想は大きく外れてしまう。

「そう。ほかにはなにしてたの?」

 探られたくないところを探られて、動揺で心拍数が上がってしまいそうになる。だが、先ほどに比べれば焦りはない。今度は冷静に答える。

「特になにもしてないよ」

 それは嘘だ。本当は大事なことをしていた。とても特別な用事があった。でも、今はまだ昨日のことについて話すことはできない。

 慶介は嘘をついてしまったことに少しの罪悪感を覚えるが、あの日になれば明かせるのだからと今は口をつぐむ。

 これ以上この話題を発展させたくはない。そう思うが、明日香はさらに突っ込んだことを訊いてくる。

「どこかに出かけはしなかったの?」

 なんだか見透かされているようで怖い。だが、それでもその質問に正直に答えるわけにはいかない。

 適当に出かけたことにしてもいいが、深掘りされては困る。ここも話題が広がらない方向に持っていった方がいいだろう。

「……いや。昨日はずっと家にいたよ」
「そっか」

 質問攻めが止んで、今度こそ安堵する。しかし、また同じような質問をされては困る。

 慶介は明日香が次になにかを言う前に、自ら話題を別のものへと変えることにした。
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