この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~

3. 本物の「愛している」

 平山とともに店を出た明日香は、今日の礼を述べようと彼と向き合うが、遠くから聞こえてきた声にそれを遮られる。

「明日香!」

 なぜ自分の名が呼ばれているのだろうかと、声のした方へ視線を向ける。すると、道の先に小さな人影が見えた。こちらへ駆けてきているようだ。

 その人を目を凝らしてよく見てみれば、それは絶対にここにいるはずのない人物だった。

「えっ、なんで……どうして慶介が……?」

 慶介が山口にいるはずがない。けれど、もう一度確かめてみても、やはりあの人影は慶介にしか見えない。

 あまりに非現実的な状況に思考が追いつかず、一人戸惑っていれば、平山が窺うように尋ねてくる。

「明日香さん、もしかして彼が?」

 首を一つ縦に振って頷く。平山はすべて察したと言わんばかりに、優しく微笑んでいる。

「どうやらお二人は、なにかすれ違っているみたいですね。そちらの道を行くと海沿いの道に出ます。大きな海を前にすれば、素直になれるものですよ」

 平山は道の一つを指さしながら、そんな助言をくれる。

 それに対し、どう言葉を返そうかと考えていたら、明日香に気を遣わせないためか、平山はすぐに別れの挨拶を口にしてきた。

「では、今日はありがとうございました」
「えっ、はい。ありがとうございました」

 互いに会釈し合う。平山は明日香を残し、一人で去っていった。

 それから間を置かずに、慶介が間近までやって来る。

「明日香」
「……慶介」

 今朝、別れのメッセージを送ったばかりだからとても気まずい。一方の慶介は、逃がさないと言わんばかりに、明日香を真っ直ぐに見ながら話しかけてくる。

「話がしたい」
「うん……ここだと邪魔になるから、移動してもいい?」

 慶介は「わかった」と頷き、この場で明日香を追及することはしなかった。
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