この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「ごめんね、慶介。ちゃんと別れ話もしないで、こんなことして。本当にごめん」
「それは違うだろ。謝るところが違う」
「え……?」
「なんで別れること前提なんだよ。俺は認めてない。明日香と別れるなんて、認められるわけないだろ」

 まだ明日香の実験に付き合う気でいてくれているのだろうか。本当にこの人は優しい。

 でも、もうその優しさに縋るわけにはいかない。慶介の幸せを願うなら縋ってはいけないのだ。

 それに、別れが必要な理由はもう一つある。

「でも、私はもうこっちに戻るって決めたから。跡を継ぐって決めたの」
「それで、さっきのやつを婿に迎えるのかよ」

 それは違うと慌てて否定する。

「違う。それは断った。もう一度恋ができればとは思ったけど、無理だって気づいたの。慶介以外もう誰も好きにはなれないから」

 平山にはどうしても忘れられない人がいるからと、断りの返事をした。その上で、ビジネスパートナーとして協力しないかと提案し、それを受け入れてもらっている。

 明日香の心は慶介への想いで埋め尽くされていて、ほかの人が入る余地は微塵もなかったのだ。それはきっとどれだけ時間が経っても変わらない。そのくらい慶介の存在が明日香に染みついている。だから、平山と結婚することはない。

「だったら、なんで別れるんだよ! 俺をもっと巻き込め! 明日香が背負うものを俺も一緒に背負いたい。一緒に悩んで、答えを見つけたい。一緒に二人の道を作っていきたい。俺に相談してくれれば、それで済む話だろ」

 偽物の恋人なのに、明日香に寄り添いすぎだ。慶介の気持ちが嬉しくてならないが、絶対に甘えるわけにはいかないと、すぐに彼の言葉を否定する。

「ダメだよ。それはダメ。だって、慶介はまだ奈菜が好きでしょ? それなのに、私の問題には巻き込めない。もしも両想いなら、ちゃんと相談しようとは思ってた。でも、違うってわかったから、慶介とは離れるって決めたの。慶介にも誰かと愛し合う幸せを知ってほしい」

 心から願いながらそう告げれば、慶介はなぜか少し怒ったような声で言い返してくる。
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