この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 明日香はそのまま心地いい温もりを再び味わおうとするが、そっと体を離される。

「明日香、ちょっと後ろ向いて」

 どうしてなのかという疑問を抱きながらも素直に後ろを向く。

 すると、真後ろでなにやらごそごそと音がしたかと思うと、首元になにかが着けられたのがわかった。触れてみると金属のチェーンのような感触がする。

「え……?」

 振り返って疑問の声を上げれば、慶介が明日香の首元を満足そうに眺めながら、その正体を教えてくれた。

「婚約指輪の代わり。指輪は料理するときに邪魔になるだろうから、ネックレスにしてみた。これなら普段から着けられるだろ」

 明日香が指輪にさほど興味がないと知って、どうするのがいいか考えてくれたのだろう。ネックレスもあまり着ける方ではないが、慶介の言う通り、料理をすることを考えると、こちらの方が助かる。

 なにより明日香を思って贈ってくれたことが嬉しい。本当に慶介が明日香との結婚を望んでくれていると伝わってくる。

 嬉しくて、嬉しくて、じんわりと涙が滲んでいく。

「ありがとう。ありがとう、慶介。すごく嬉しい」
「喜んでくれたなら、よかった。本当は明日香の誕生日に、誕生日プレゼントと一緒に渡すつもりだったんだ。誕生日は俺ん家に泊まりたいって言ってたから、家でくつろいでるときに、さりげなくプロポーズする計画だった」

 明日香の誕生日はもう少し先だ。別れを切り出したせいで、その計画を崩してしまったのだろう。

「そうだったんだ。ごめん、私のせいだよね。計画通りにできなかったの」
「謝らなくていい。明日香が喜んでくれれば、それでいいんだ」
「うん。本当に嬉しいよ。理想以上のプロポーズだから。涙が出るほど嬉しい」

 嬉しさで、瞳に溜まっていた涙がぽとりと落ちる。

 自分の結婚式で泣くのかと訊かれたときはまったく想像できなかったが、自分のことでもここまで嬉しければ涙は出るものらしい。

 慶介は頬に残った涙の跡を優しく拭ってくれた。

「明日香、愛してる」
「私も慶介を愛してるよ」

 二人の想いが本物であることを互いに誓うかのように、二人は優しくそっと触れるだけのキスを交わした。
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