この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「新商品の件はどう?」

 そう問いかけた相手はほかでもない慶介。慶介も今はここで働いている。

 結婚当初は別居をして、それぞれの場所で頑張っていたが、一年ほどして慶介のミコメ食品での引継ぎ作業が無事に終わると、彼もこちらへとやって来た。

 もちろん慶介が独断で決めたわけではない。何度も話し合って、この形に落ち着いたのだ。

 商品開発と改善を主に担当している慶介は、すでに大きく貢献してくれており、彼の力もあって、如月味噌は今とてもいい波に乗っている。この状態を維持できれば、この先も安泰と言えるだろう。

 明日香の問いかけに対し、慶介は自慢げに語り出す。

「海外からの旅行者向けの商品を考えてみたよ。最近、うちに見学に来る人の中にも、海外の人が増えてきただろ? だから、味噌に親しみがなくても、手軽に味噌を楽しめる商品を考えてみた」

 資料に載っているのはチューブ型の商品。調味料として手軽に使えるようにという案のようだ。様々な種類の味噌をセットにしたバージョンも考えられており、土産物としての需要が高いのが窺える。

「いい! これ、海外の人だけじゃなくて、日本人がちょっとしたお土産に買うのもありだよね。うちの宣伝にもなるし、すごくいいと思う!」

 明日香が興奮して喜べば、慶介も嬉しそうに笑っている。

「明日香ならわかってくれると思ってた。使いやすさを重視したいから、味噌単体を入れるのか、出汁入りにするのか、あるいはほかの調味料と合わせるのかは、検討が必要だな」
「そうだね。どういう使い方をするかはよく考えておきたいね」

 二人で盛り上がっていると、平山が楽しそうな声でからかってくる。

「さすがはおしどり夫婦。いつ見てもいい掛け合いですね」

 平山は面白がって、すぐにこういうことを言ってくるのだ。そして、慶介はそのからかいに対しても、謎の張り合いを見せる。

「ええ、おかげさまで。明日香とは相思相愛なもので」

 明日香一人が恥ずかしくて、慌てて二人の間に入る。

「仕事、仕事! 仕事をしましょう! 私はちょっと工場の方に行ってきます」
「は? 戻ってきたばかりだろ」
「……席に戻ります」

 慶介と平山の笑い声が響く。やはり明日香一人が恥ずかしい思いをしている。どうしていつもこうなるのだと、明日香は自席でわざとらしく唇を尖らせていた。
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