この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
第二章 恋人よりも恋人らしく

1. よきライバル

 とんでもない提案をした翌日。会社で顔を合わせた慶介の様子は、いつもと少しも変わっておらず、恋人のような空気は微塵も感じなかった。

 会社では人の目があるからいつも通りなのかもしれないとも思ったが、休憩時や仕事帰りに一緒になったときも、やはり同僚もしくは友人としての距離のまま。明日香もつられていつも通りに接してしまう。

 数日が過ぎてもそれは変わらず、明日香はあの日のことは夢だったのではないかと自分の記憶すら疑い始めている。

 そんな悩ましい日々を送る中、明日香に大きなチャンスが訪れようとしていた。

「穂高ー。部長が私と穂高に話があるって言ってる。今日、どこかで時間取れるか訊かれたんだけど、午後一でもいい?」
「あー、大丈夫」
「わかった。じゃあ、部長に言っとく」
「ん、よろしく」

 やはり慶介の雰囲気はいつもとまったく同じ。明日香も仕事中はその方が助かるからいいのだが、そろそろあの日のことについてちゃんと確認しておきたい。

 金曜日ならば次の日のことを気にせず、ゆっくりと話せるだろうか。

 そんなことを考えながらも、足は部長の席へと向かう。午後一での約束を取りつけると、その後は余計なことは考えずに集中して仕事に取り組んだ。
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