この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 二人の腹はしらす丼でそこそこ満たされたものの、食べ歩きとなればこれだけでは終われない。

 その後もピザに浜焼きにジェラートにと、江の島グルメをこれでもかと満喫し、もうなにも入らないというくらいまで腹を満たした。

 そうして食欲がすっかり満たされると、明日香の中にふと疑問が浮かび上がる。

「あれ、なんかいつも通りじゃない?」

 今日は恋人としてのデートだったはずなのに、気づけばいつも通りの二人で過ごしてしいた。手は繋いでいるものの、それも途中からはほとんど意識しておらず、二人の空気は友人としてのそれに戻っている。

「ま、俺たち二人でいたらこうなるよな」

 その言葉に明日香は項垂れる。はあと深いため息が漏れた。

「普通に楽しんじゃった」
「別に普通に楽しんでもいいだろ。楽しくないデートの方が問題じゃないか?」

 そう問われると、その通りだと納得する。楽しいことが悪いわけではない。

「言われてみれば、そうかも。こうやって楽しむのが、私たちのデートのしかたってことかな。硬くなりすぎるよりはいいのかもね」

 恋人らしくという目的からは少し外れているような気もするが、この楽しい時間を続ける中でそういう想いが芽生える可能性もなくはない。

 いつもの居心地のよさを下手に消してしまうよりかは、普段の空気を残しながらも、少し意識を変えるくらいがちょうどいいとも思える。

 明日香が今好きになろうとしているのは、デートをしてくれる誰かではなくて、慶介という人なのだから。

「俺たちは俺たちなりに過ごせばいい。でも、まあ、最後に少しくらいはいつもと違うことしておくか」
「え?」
「腹ごなしに海岸でも歩こう。普段の俺たちならしないだろ?」

 絶妙な提案に感心して頷く。今の二人にとって、それは適度に恋人としての時間を意識できる過ごし方だ。

「確かに。いつもならこのまま解散してるよね。じゃあ、今から恋人らしくいい雰囲気でお散歩ってことで」
「ん、行こう」
< 40 / 184 >

この作品をシェア

pagetop