この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 明日香は繋いだ手をちょっとだけ意識して、歩き始める。

 食のことから離れれば、自然と意識は慶介の方へ。

 ゆっくりと歩いてくれる歩調だとか、優しい手の握り方だとか、さりげなく明日香を気遣ってくれていることに気づいて、胸が温かくなる。

 そんな慶介の優しさに背中を押されて、もう少しだけ恋人らしい空気を作ってみようという気持ちが芽生える。明日香は繋いでいる手をそっと動かし、指を絡める繋ぎ方に変えてみた。

 慶介は嫌がることなくそれを受け入れてくれる。さらには繋いだ手に少しだけ力を込めて、きゅっと握りしめてくれた。

 二人はそのままその空気を楽しむように、静かに海岸沿いの道を歩く。無言でいても、今は気にならない。互いの存在が心地いい。

 明日香はその時間をなぜだかとても贅沢に感じた。
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