この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~

2. いつもとは違う二人

 路線の違う将人と奈菜とは駅で別れ、二人きりになった明日香と慶介。明日香はすぐに慶介に問いかける。

「この後どうする?」

 将人たちに会った後は、二人で二軒目に行くのが常。酒を酌み交わし、互いを慰め合うのだ。

 当然、今日も同じ流れになると思っていた明日香は、この辺りの飲食店情報を頭の中で展開する。慶介が選びそうな店はどれだろうかと考えていれば、予想外の答えが返ってきた。

「今日は帰ろう。昨日は遅かったからな。早く帰って寝た方がいい」

 明日香は軽く驚きの表情を浮かべる。二件目に行かないという選択肢は少しも考えていなかった。二人で過ごすものだと思い込んでいた。

 慶介の言葉からして、明日香を気遣ってくれてのことだろうが、なぜか拒絶されたように感じて、ショックを受ける。

「……そう、だね」

 俯きながら小さく答えれば、頭上から優しく声がかかってくる。

「家まで送る」
「え?」

 またもや予想外のことを言われて、聞き間違いだろうかと首を傾げる。

 今は仮の恋人関係になっているとはいえ、家まで送ってもらったことはない。住所は互いに知っているが、それぞれの家に行ったことはただの一度もないのだ。

「行くぞ」

 慶介は戸惑う明日香の手を取り、改札に向かって歩き出す。その行動でようやく本当に家まで送ってくれるのだと理解する。

 明日香の家に帰るまでの間だけとはいえ、まだ慶介と一緒にいられるのだと思うと、明日香の顔には小さな微笑みが浮かんでいた。

「ありがとう、慶介」
「ああ」

 それ以上は語らずに並んで歩く。いつもよりも少しだけゆっくりとした歩調。互いに別れを惜しんでいるのがわかった。
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