この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 明日香の自宅の最寄駅から電車で一本で行ける繁華街。メイン通りにはたくさんの店が建ち並び、週末の今日は多くの人で賑わっている。

 そんなメイン通りからは少し外れた場所にある喫茶店。明日香と将人はそこで顔を合わせていた。

「今日は突然ごめんね。時間くれてありがとう」

 やわらかく微笑む将人を見れば、やはりこの笑顔が好きだなと思う。だが、以前のような焦がれる感覚はない。好きになりたての頃の淡い気持ちに近いかもしれない。

 将人への恋心としっかり決別できているからなのか、ただ違う形に変化しただけなのかはよくわからない。

 ただ、少なくとも苦しい気持ちにはなっていないことに安堵する。この調子ならば、将人からどんな話をされても、きっと受け入れられるだろう。

 明日香は意識を自分のことではなく、将人のことへと集中させる。

「別にいいよ。でも、急に二人でなんてどうしたの? 奈菜となにかあった?」

 将人から話があると言われれば、それは十中八九奈菜のことだと思っている。

 奈菜本人にも、慶介にも言えないような悩みを抱えているのではないかと不安になりながら問えば、将人は優しい表情のまま静かに首を横に振る。

「ううん。心配するようなことはなにもないから大丈夫だよ」
「そう?」
「うん」

 一つ頷いた将人はなぜか明日香の方を見て、にこにこと微笑んでいる。よほど嬉しいことでもあったのだろうか。

 理由はよくわからないが、真っ直ぐに視線を送られると落ち着かなくて、明日香は視線を外すようにしてコーヒーに口をつけた。
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