この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「言えないよ……本人の口から言いたかっただろうし、それに、私の口から慶介を傷つけることなんて言えない」
「全部は言えなくても、つらい気持ちくらい吐き出せよ。それをわかってやれるのは俺だけだろ。違うか?」

 違うわけないと、大きく首を横に振る。

 明日香の気持ちを正しく理解してくれるのは慶介だけ。そして、それは逆も然り。慶介の気持ちを正しく理解できるのも明日香だけだ。

 どうか慶介もつらい気持ちを吐き出してほしいと思いながら答える。

「違わない。慶介の気持ちがわかるのも私だけだよ」
「だったら、もっと俺に甘えろよ。俺たちは恋人なんだろ? 俺には遠慮なんてしなくていい。醜い感情も全部見せていいんだ」

 恋人だと言ってくれる慶介に、強く胸が締めつけられる。どうしてこんなにも明日香のことを思いやってくれるのだろうか。

 慶介の温かな言葉に涙が浮かびそうになる。彼への想いが溢れて、外に漏れ出してしまいそうだ。

 だが、今それを慶介に悟られてはならない。明日香は慶介への想いを抑え込み、彼の心を救うことだけを考える。

 恋人だと言ってくれるのなら、慶介もその関係に甘えてほしい。明日香にすべてをぶつけてほしい。そんな思いで言葉を返す。

「慶介もだよ。慶介も私にはなにも我慢しなくていいよ」
「俺のことはいいんだよ。そもそも我慢なんてしてない。明日香はもっと自分のことを考えろ。そんなだから心配になるんだ」
「慶介……」

 ここまで大切にされては、せっかく抑えている想いがまた溢れてしまう。今は慶介の心配だけしていたいのに、強いときめきに支配されていく。

 たくさんの感情が心の中で絡み合い、一つ一つの輪郭がぼやける。そうして生まれた慶介への大きすぎる気持ちに、思わず胸を押さえれば、突然、力強く抱きしめられた。
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