この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 三秒にも満たないキスをして、元の位置に戻る。伏せていた瞼を開けて、視線を慶介へと向ければ、そこには口元を手で覆い、顔を赤らめた慶介の姿があった。

 初めて見る慶介の初心な反応に、今さら明日香は思い出す。慶介にはその経験がないのだと。

「っ……ごめん。初めてだったのに、勝手にキスして。本当にごめん。もうしないから」

 大事なものを奪ってしまったと、深く反省して俯けば、頬を彼の手に包み込まれる。そのままその手が明日香の顔をくいっと上へ向けさせた。

 少し意地悪な表情をした慶介と目が合う。

「やり逃げかよ」

 別のことを連想させる言い方に、今度は明日香が顔を赤く染める。

「やっ!? ……変な言い方しないでよ」

 恥ずかしくて目を合わせられず、視線だけ下げれば、優しく「明日香」と呼びかけられる。

 それにつられて視線を上げてみれば、やたらと真剣な表情をした慶介と目が合った。
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