この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「明日香にはなにも我慢しなくていいんだよな」

 それはいったいどういう意味なのかと慌てふためく。

「えっ? いや、えっと、そうだけ――んっ!?」

 しゃべっている途中にもかかわらず唇を塞がれる。

 どうして慶介からキスしてくるのだろうかと、明日香は軽いパニックに陥る。頭が混乱して、抵抗することも、受け入れることもできない。そんな明日香に、慶介はキスを繰り返す。

 つい先ほど初めて経験したばかりのはずなのに、なぜか慶介がするキスはやたらと甘い。明日香はそのキスで翻弄されていく。

 もはやなにかを考える余裕はなく、気づけば彼から与えられるものをすべて素直に受け入れていた。

「明日香」

 真っ直ぐな瞳にとらわれる。その視線から、明日香を強く求めていることがわかる。

 だが、それで勘違いはしない。明日香への想いからくるものではないとちゃんとわかっている。彼は今、偽りのキスで慰められているのだ。そう思った。

 自分とのキスで慶介の心を癒せるのならば、いくらでもこの唇を差し出そう。

「慶介」

 甘く呼びかけ、慶介へと顔を寄せれば、ちゃんと迎え入れてくれる。

 明日香と慶介は互いを慰め合うように、何度も口づけ合った。

 本当は明日香の心には慰めてもらうような傷などないが、そのことには素知らぬふりをして、甘く切ない傷の舐め合いに浸っていた。
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