この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 熱を帯びた視線を慶介に送りながら、明日香は問いかける。

「家、寄ってかないの?」
「遅くなるから」
「そう……」

 それはただの言い訳だとわかっている。明日香が家に誘っても、慶介はただの一度もそれには乗ってこない。明日香の家に上がってくれたのは、互いを慰め合ったあの日だけ。

 きっとここが慶介にとっての線引きなのだろう。本物の恋人ではないから、踏み込みすぎないよう注意を払っている。

 それでも慶介は最大限明日香を恋人扱いしてくれる。

「そんな寂しそうな顔すんな。帰れなくなるだろ」
「ごめん」
「謝らなくていい。素直に寂しい顔を見せてくれた方が安心するからな。明日香が寂しいってわかれば、たくさん一緒にいてやれる」

 寄り添ってくれる気持ちがとても嬉しい。慶介の腰に回した腕に少しだけ力を込めて、その嬉しさを伝える。

「ありがとう、慶介」

 明日香の気持ちはちゃんと伝わったのだろう。慶介は明日香の髪を優しく撫でながら、頷いている。

「平日はなかなか難しいけど、週末はたくさん一緒に過ごせるから」
「うん……朝からでもいい?」

 おずおずと尋ねれば、慶介は迷わずに受け入れてくれる。

「いいよ。明日香のために一日空けてあるからな。明日香が平気ならちょっと遠出でもするか? たまにはドライブデートってのもいいだろ」

 とても魅力的な提案に、明日香は即答する。

「したい! グルメ旅に行きたい!」
「ははっ、いいな。それなら今週計画立てて、来週にでも行くか」
「いいね! 楽しみ!」

 嬉しさを滲ませて、にこにこと笑えば、慶介の表情がぐっとやわらかくなる。

「ようやく笑顔になったな」

 その台詞から、明日香の心を浮上させるための提案だったのだと気づく。慶介の優しさに、明日香の心は温かい気持ちで満たされた。
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