お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています
紗良が搬送された数時間後、別の会議室では張り詰めた空気の中、警護にあたっていた警視庁SPの一同が椅子に座っていた。
公安部による事情聴取。
「襲撃者はどうやって記者証を偽造し、チェックをすり抜けたのか」
「代理出席者の情報はどこから漏れたのか」
「襲撃直前の隊列、配置、死角は?」
矢継ぎ早に問われる言葉の嵐に、橘も松浦も、表情をほとんど変えずに答えていた。
警護にあたっていたメンバーは全員、調査終了までの三日間、任務から一時離脱。
代わりに内調からの要請で、別班の人間が紗良の警護に就くこととなった。
「非公式ながら、上からの指示だ。感情を交えずに受け取れ」
そう言われたとき、橘の拳は静かに膝の上で握られていた。
――守れなかったからではない。
――まだ終わっていないというのに、そばにいられないことが悔しいだけだ。
その間、メディアでは徐々に襲撃犯の詳細が報じられ始めた。
「男は三枝孝太郎 48歳。元グリーンテクノロジーズ社員。官民連携事業の失敗で会社が解散、雇止めに」
「財務省を逆恨みし、現職大臣に接触できないことから娘を狙ったとみられる」
「なぜ代理出席者の名を知っていたかは、いまだ調査中」
メディアの報道に追われるように、病院の周辺も厳戒態勢が敷かれ、紗良の病室には一切の立ち入りが制限されていた。だが——。
三日目の午後、面会申請を通して、静かにその扉が開かれる。
「……お父さん」
小さくそう呟いた紗良の前に、一ノ瀬岳が立っていた。
数ヶ月ぶりの対面。
それは、怒りか、哀しみか、言葉にならない感情のまま、二人の目が静かに交錯した。
公安部による事情聴取。
「襲撃者はどうやって記者証を偽造し、チェックをすり抜けたのか」
「代理出席者の情報はどこから漏れたのか」
「襲撃直前の隊列、配置、死角は?」
矢継ぎ早に問われる言葉の嵐に、橘も松浦も、表情をほとんど変えずに答えていた。
警護にあたっていたメンバーは全員、調査終了までの三日間、任務から一時離脱。
代わりに内調からの要請で、別班の人間が紗良の警護に就くこととなった。
「非公式ながら、上からの指示だ。感情を交えずに受け取れ」
そう言われたとき、橘の拳は静かに膝の上で握られていた。
――守れなかったからではない。
――まだ終わっていないというのに、そばにいられないことが悔しいだけだ。
その間、メディアでは徐々に襲撃犯の詳細が報じられ始めた。
「男は三枝孝太郎 48歳。元グリーンテクノロジーズ社員。官民連携事業の失敗で会社が解散、雇止めに」
「財務省を逆恨みし、現職大臣に接触できないことから娘を狙ったとみられる」
「なぜ代理出席者の名を知っていたかは、いまだ調査中」
メディアの報道に追われるように、病院の周辺も厳戒態勢が敷かれ、紗良の病室には一切の立ち入りが制限されていた。だが——。
三日目の午後、面会申請を通して、静かにその扉が開かれる。
「……お父さん」
小さくそう呟いた紗良の前に、一ノ瀬岳が立っていた。
数ヶ月ぶりの対面。
それは、怒りか、哀しみか、言葉にならない感情のまま、二人の目が静かに交錯した。