両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
名前を呼ばれ、舞台へ出ていく彼女はもう俺のことなんか忘れてしまった。
聴こえてくる音は正確で乱れがない。
広いホールに響く音は力強く、自信に満ちている。
大きな歓声に包まれた時、もう結果はわかっていた。
「また雪元千愛さんが優勝ね」
「演奏してない人もいるんだから、黙って」
そう言ったのは雪元千愛と同じ年の陣川結朱だった。
悔しそうに両手を膝の上で握りしめている。
結果はわかっているのにそう言えるだけのプライドは見事だ。
俺も悔しい。
それはピアノではなく、小さく弱い体が悔しかった。
だから、この瞬間から俺は強くなることを決意した。
もっと強くなろうと。
けれど、うまく声をかけることができずに結局片思いのまま、時間ばかりが過ぎてしまった。
大人になるまで。
そして、今―――俺のそばに千愛がいる。
うとうとと手のひらに頬をのせ、眠る千愛がいた。
聴こえてくる音は正確で乱れがない。
広いホールに響く音は力強く、自信に満ちている。
大きな歓声に包まれた時、もう結果はわかっていた。
「また雪元千愛さんが優勝ね」
「演奏してない人もいるんだから、黙って」
そう言ったのは雪元千愛と同じ年の陣川結朱だった。
悔しそうに両手を膝の上で握りしめている。
結果はわかっているのにそう言えるだけのプライドは見事だ。
俺も悔しい。
それはピアノではなく、小さく弱い体が悔しかった。
だから、この瞬間から俺は強くなることを決意した。
もっと強くなろうと。
けれど、うまく声をかけることができずに結局片思いのまま、時間ばかりが過ぎてしまった。
大人になるまで。
そして、今―――俺のそばに千愛がいる。
うとうとと手のひらに頬をのせ、眠る千愛がいた。