両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「俺に合わせようとしただろ?合わせるのは俺の仕事。千愛にやられると困る」

確かにそうだ。
そう言われて気づいてしまった。
唯冬の音に合わせてみせるなんて、驕った気持ちが出て無様に転んだ。
当たり前だ。
踊る練習をしてないかったくせに踊った私が転ぶのは。
恥ずかしくてうつむいた。
客席に戻ると知久さんは拍手をして出迎えてくれた。

「うまく弾けなくて……ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。弾いてくれてありがとう」

知久さんは笑った。

「でも、よかった」

よかった?
あの演奏が?

「弾けなくなったっていうから、どんなふうなかんじなのかなって思ったけど。君はスランプじゃないかな」

「スランプ?」

親に連れられ、カウンセリングを受けた時も言われたけど……
それがわかるのか、知久さんは微笑んだ。

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