両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「おじさま、お話し中ごめんなさい」

入ってきたのは結朱だった。
いつからいたのか、紺のスーツを着ている。
ここにくることを最初から決めて家を出てきたなとすぐに察することができた。
そして、誰が父親に千愛と暮らしていることを伝えたのかも。
結朱は俺と目が合うと会釈した。

「私は言わずにいたけれど、ずっと唯冬さんが好きだったの」

このタイミングで言うか。
はあっとため息をついた。

「一度、断ったはずだ」

「ええ。高校生の時にね。けれど、そのうち私のことを婚約者として見てもらえるんじゃないかと期待していたの」

「ねえ、唯冬。結朱さんに不満なところはある?お互いピアニストとして理解しあえるし、教育もきちんと受けている真面目なお嬢さんよ。申し分ないでしょう」

自分と結朱を重ねているのだろうか。
母親は完全に結朱の味方だった。

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