両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
顔は綺麗だし、モテそうなのに―――モテるからこそ、親しい女性が一人くらい増えたところで問題ないってこと?

「俺のことは唯冬って呼んで。君のことは千愛って呼ぶから」

「なに勝手に決めているんですか。もう会うこともありませんから」

放っておいたら、知り合いから親友にまで格上げされそうな勢いに慌てた。
なんてマイペースな人だろう。
このカフェにはもう来れないと思った。
ピアノがある空間―――ここでは落ち着いて過ごすことができない。
昔を思い出してしまう。
それが怖い。
あの失った瞬間の私の絶望を繰り返し思い出させるつもりだろうか。
この人は。

「これから何度でも会うよ。君には俺が必要だから」

「どういう意味ですか」

「君に魔法をかけてあげようか」

悪い魔法使いのように彼は笑った。

「手を出して」

「手を?」

なにを言っているのかわからず、呆然としていると手をつかまれた。
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