両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「結朱さんには結朱さんの音がありますよ。共演にこだわらなくてもいいのでは?」

「宰田さん。これは私の意地だったの」

「余計なことでしたね、すみません」

おっとと口に手をあてた。

「千愛さん。戻ってくるのね」

「え?」

「ピアニストになるの?」

そう言われ、前のように『無理です』とか『そんなこと考えていません』とは答えることができなかった。

「……簡単には戻れないと思っています」

「当たり前よ。こっちはずっと勉強してきたんだから。でも、待っているわ。きっとあなたなら、ここまでこれる」

結朱さんはすっと私に手を差し出した。
その手をとり、握手をすると結朱さんは堂々とした態度で背を向け、去って行った。
いなくなってから、宰田さんが口を開いた。

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