両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「俺はりんごジュース」

真剣な顔で選んでいた逢生はただのジュースだった。

「ミネラルウォーターで」

二人は俺を見る。

「水か」

同時にそう言われたが、当たり前だろ。
二人の顔には『面白味のない男だな』と書いてある。
ふざけてそのチョイスなのか?
真面目に生きろよと思いながら、メニューを閉じた。
この二人に真面目という単語は存在しないことを思い出して。

「ほら見ろよ。おまちかねの奏者がご登場だぞ」

知久は片目を閉じ、ワイングラスに口をつけた。
虹亜がぎこちない動作で現れてお辞儀する。
コンサート会場ではないから、とくに拍手はない。
おしゃべりする老夫婦、自分達しか見えていないカップル。
それが気になるのか、ちらちらとフロアに視線を泳がせていた。

「うーん。他の人を気にしすぎかな」

「すごく意識してるね」

店の空気にあわせられるかどうか。
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