両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
隈井先生のこんなに焦った顔を見たことがない。

「休息は大事だよ」

真面目な顔で#逢生__あお__#は言ったが、千愛に限ってあり得ない。

「これは……トラブルかもな。探そう。スタッフの誰かが千愛ちゃんの姿を見ていないか聞いてくるよ」

#知久__ともひさ__#は険しい顔をしていた。
逢生と違ってすぐに察してくれて助かる。
なにがあった?
ここにきて、いったい誰が千愛を妨害した?

「千愛の両親か妹のどちらかか」

「渋木君。なんて顔をしているんだ。まるで視線で人を殺せそうなくらいの顔じゃないか。君はそんな顔をするような人間じゃないだろう?」

「先生も周りも俺を買いかぶりすぎなんですよ。俺はそんな優しい人間なんかじゃないんです」

千愛を救いたいという気持ちは確かにあったかもしれない。
けど、結局は自分のために千愛をそばに置きたかっただけだ。
あの優しく触れる指を忘れられなくて。
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