両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「純粋に聴いているだけなのに」

「それで、その感想かよ!お前が眠ったら、まぶたに目を描くからな。油性ペンで!」

知久に注意され、逢生はわかったと真面目な顔で返事をしていた。
うるさい二人を無視して、プログラムを眺めた。
本選に残ったメンバーの中には雪元千愛の名がある。
彼女はきっと俺のようにこのコンクールに優勝し、来年には同じ音楽院に留学するはずだ。

「知久の妹の演奏は終わった?」

「かなり前にな!逢生!ちゃんと俺の妹の演奏を聴けよ!」

「妹?」

「おい、唯冬。俺の妹の結朱(ゆじゅ)がこのコンクールに出場しているって言わなかったか?」

「そうだったか」

「結朱はお前の婚約者だろ?」

「親が決めた形だけのね」

じろりと知久をにらんだ。

「わかってるから、そんな怖い顔するなよ」

俺の気持ちは完全に無視で、両親は婚約者を決めた。
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