両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
昔よりその背中は年老いて見えたけど、足取りはしっかりしていてまだまだ現役。
その背中に会釈し、舞台へと向かう。
舞台袖には深紅のドレスを着た虹亜がいる。
まさか閉じ込めたはずの私がここにやってくるとは思いもしなかったのだろう。
私の姿を見て動揺していた。

「どうやって出てきたの!」

声を張り上げた虹亜に周囲の視線が集まる。

「静かにしてください」

スタッフが近寄って注意すると虹亜はスタッフの手を振り払うように椅子から立ち上がった。
その瞬間、ちゃりんと金属音が床に響く。
しまった!という顔をして虹亜は床を見る。
それを運営スタッフがすばやく拾った。

「これは倉庫の鍵では?」

私を閉じ込めて安心したかったのか、虹亜はその鍵をずっと持っていたのだろう。
私がピアノの部屋の鍵を持っていたのと同じ。
青ざめた顔で虹亜はうつむいていた。

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