両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「落ちていたのを拾って届けようとしたのよね。虹亜?」

「お姉ちゃん……」

泣きそうな顔をしているのは演技じゃない。
いつも両親に怒られている私を見て育った虹亜はあんな顔をよくしていた。
仲良くはできないけれど、理解することはできる。

「私の演奏の番ですよね。案内をお願いします」

運営スタッフの人は気づいているのか、難しい顔をしていた。
けれど、私がなにも言わなければ、誰が閉じ込めたかはわからない。

「虹亜。お互い頑張りましょう」

それだけ言って私は虹亜に背を向けた。
私が目指すのはここじゃない。
舞台を見た。
そこにはスタインウェイのグランドピアノが置かれている。

「雪元千愛さん。曲はリストよりラ・カンパネラ」

明るい光がピアノを照らしてキラキラとしていた。
両親が客席にいて、先生もいる。
あのコンクールのと同じ。
唯冬と目があった。
私は微笑み、お辞儀する。
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