両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
先生が窓を開けるのと同時に外の涼しい風が入ってきて、息苦しさが少しだけ消えた。

「先生。俺達の演奏を久しぶりに聴かない?」

顔を窓の方に向けてないから誰なのかはわからないけど、卒業生らしく、怒りながらも隈井先生の口調はどこか柔らかい。

「俺達のCDは買っていただけたみたいですね。先生の部屋に並んだコレクションの中にありました」

「勝手に人の部屋にはいるなっ!」

偉い先生になると学内に個室をもらえる。
その個室に隈井先生が自分の教え子達のCDを並べてあるのを知っている。
優秀な卒業生なんだなと思いながら、椅子から立ち上がった。
もうここにいる理由はない。
弾けないのだから。

「……私はこれで失礼します」

「邪魔だった?」

私は先輩の声に首を横にふって、ドアノブに手をそえた。
むしろ助かったと思っていた。
先生の話は私には響かない。
それに先生も私も気づいている。

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