両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「負け惜しみを言わなくてもいいのよ。私ね。お姉ちゃんが最後に出場したコンクールに出場するために戻ってきたの。ちょうど卒業だったっていうのもあるけど」

「そう」

「そのコンクールで優勝したらプロデビューできるの。お姉ちゃん、応援してくれる?」

「なにもできないけど……」

「知ってるわよ。お父さんもお母さんもお姉ちゃんがなにもできないから、いらなくなったんだし。これからもそう。ずっとね」

明るい日差しのはずなのになぜか暗く感じる。
虹亜からは私に対する嫌悪感を感じた。
私がピアノが弾けなくなる前は『お姉ちゃん大好き』と言っていたのに弾けないとわかると手のひらを返したかのように冷たくなった。
態度が変わらなかった人は私の周りでは祖父母だけ。
―――でも、もしかすると、あと一人くらいはいるのかもしれない。
頭に渋木唯冬の姿が浮かんだ。
『今の君も好きだよ』
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