両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
まるで、体の中に嵐が起きているのではというくらいの激しさで彼女―――雪元千愛が一心不乱に弾いている。
白い鍵盤が跳ね、指を乱暴にたたきつける姿。
滅茶苦茶でまともな曲にはなってなかったけれど、こんなに早くその姿を見れるとは思ってなかった。
もっと聴いていたいと思う気持ちはあった。
けれど―――すっとその手をつかんだ。

「千愛。指を痛める。ピアノも可哀想だ」

汗がにじんだ額で俺を見上げた。
顔を赤らめ、唇を噛んでうつむいた。
俺に聴いて欲しくなかったのかもしれない。

「すみません……」

「庭で溺れるところだったな」

俺の言葉に千愛の細い肩が震えた。

「唯冬は言い方がきついから」

「怒ってるんじゃない。姉さん、少し席を外して」

「姉さん?」

「そう。この店は俺の姉の小百里がやってる」

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