両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「小百里お姉さんでしょっ!生意気なんだから」

小百里はぷんぷんと怒りながら、クローズの札を店先にかけた。
ひとつしか違わず、しかもあの子供っぽさである。
怒るから姉さんと呼んでいるだけだ。

「どうぞ、ごゆっくりー。唯冬。私のお店の中で変なことしないでよ?」

「するか!」

小百里は疑いのまなざしを向けて店の奥へと入って行った。
なんだ、あの言い方は。
はぁっとため息をついて千愛のほうを見た。
目が合う。
まるでピアノ教師と生徒だな。
叱られると思って身をすくめている子供。
人とあまり接することに慣れてないのか―――

「弾くのはいいが、指は大切にしてくれ」

「……もう弾けないってわかったでしょ」

「ちゃんと弾いてた。ドビュッシーの雨の庭だろう?」

「あんな滅茶苦茶だったのにわかったの?」

「わかる。君のことならなんでもね」

驚いた顔で俺を見上げた。

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