両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
口に入るものなら、なんでもいいなんて思っていた。

「千愛に足りないのは熱だよ」

「熱……」

「音楽への熱があれば、弾きたいっていう気持ちが自然に持にてるようにになる」

「唯冬は先生みたいね」

それも口うるさいタイプの。
唯冬はにこっと嬉しそうな顔をした。
今のは嫌みなのになぜ?と思っているとハノンを私の手からとり、台に置いた。

「名前、呼んでくれて嬉しい」

手をとり、手のひらに口づける。
柔らかな感触と熱が伝わり、自分の顔が赤くなるのがわかった。

「ちょっ、ちょっと!いちいち手にキスをしないで!」

「じゃあ、口に」

「なおさら、ダメっっっ!」

身構えると唯冬は渋々手を離した。

「魔法のキスかもしれないのに」

「もうだまされないわよ」

油断大敵。
ちょっと気を抜くとなにをするかわからない。
とんでもないわ……本当に。

「魔法は効いてるみたいだけど?」

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