両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
以前までなかったのにどうして―――?
心臓が早鐘を打ち、手のひらに汗がにじんだ。
「まさかスタインウェイ……?本物?」
白く滑らかな鍵盤が私を呼ぶ。
『弾いて』と。
それはできないのと心の中で答えた。
頭の中に音がないから。
コンクール最終日。
私は音を失った。
いつも鳴りやまなかった音が頭の中から一瞬にして消えた。
けれど、なぜだろう。
きっとこのピアノと雨のせい。
二度と触れることはないと思っていた白い鍵盤に人差し指を一本だけ置いた。
気まぐれに人差し指で白い鍵盤をポーンッと叩いた。
私以外のお客さんはおらず、広いフロアに音が響く。
外の雨が激しくなって、ピアノの音を包みこんだ。
「……っ!」
雷鳴と同時に一瞬で引き戻されたのは過去の私。
コンクールの舞台から降りる私、失望と嘲笑、閉じ込められる私の姿。
そして深い闇。
頭の中に映像が次々と流れて足が震えた。
心臓が早鐘を打ち、手のひらに汗がにじんだ。
「まさかスタインウェイ……?本物?」
白く滑らかな鍵盤が私を呼ぶ。
『弾いて』と。
それはできないのと心の中で答えた。
頭の中に音がないから。
コンクール最終日。
私は音を失った。
いつも鳴りやまなかった音が頭の中から一瞬にして消えた。
けれど、なぜだろう。
きっとこのピアノと雨のせい。
二度と触れることはないと思っていた白い鍵盤に人差し指を一本だけ置いた。
気まぐれに人差し指で白い鍵盤をポーンッと叩いた。
私以外のお客さんはおらず、広いフロアに音が響く。
外の雨が激しくなって、ピアノの音を包みこんだ。
「……っ!」
雷鳴と同時に一瞬で引き戻されたのは過去の私。
コンクールの舞台から降りる私、失望と嘲笑、閉じ込められる私の姿。
そして深い闇。
頭の中に映像が次々と流れて足が震えた。