両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
楽器店に着くと店の入り口から奥まできょろきょろとあたりを見回した。
けれど、唯冬の姿はない。
先に少し見ていようかと思い、楽譜コーナーに向かおうとした瞬間、名前を呼ばれた。

「もしかして、雪元千愛さんじゃない?」

振り返るとそこにはつい昨日、会ったばかりの陣川結朱さんがいた。
スタイルのいい綺麗な女の人で華やかな容姿はお兄さんの知久さんによく似ている。

「こんにちは。結朱さんでしたよね?」

そう名前をたずねると表情を曇らせた。

「そう、私のことなんて覚えていないわよね。天才少女さんは」

トゲのある言い方に驚いていると結朱さんはふっと私を見て笑った。

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