両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
楽器店の店員さんが私達の不穏な空気を感じたのか、何事かと近寄ってきた。
仲裁しようと思ったのかもしれなかったけれど、結朱さんの顔を見るとそんな気持ちはなくなってしまったようだった。

「うわっ!もしかして、ピアニストの陣川結朱さんじゃないですか?」

「そうよ」

結朱さんは私のほうをちらりと見てから、にっこりと店員さんに微笑んだ。

「感激だな。えーと、サイン!サインしてもらってもいいですか」

「ええ」

人が集まってきて、結朱さんは何人かにサインをしていると店員さんがピアノを指差した。

「もし、よかったから一曲だけでも弾いてもらえませんか?」

「私に?」

「できたら!」

店員さんが嬉しそうな顔でうなずくのを見て、くすりと意地悪く笑った。

「でも、私よりそこにいる雪本千愛さんのほうがいいんじゃないかしら?彼女、天才少女って呼ばれていたのよ」

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